第3回【生成AI導入の前にやるべきこと】
2026.08.18
生成AI導入の前にやるべきこと
「生成AIを導入したい」という相談を受ける機会が増えています。ChatGPTをはじめとする生成AIは、文章作成や要約、情報整理など、多くの業務で活用できる可能性を秘めています。しかし、生成AIを導入すれば自治体や企業の業務が劇的に改善するわけではありません。
むしろ重要なのは、「生成AIを導入すること」ではなく、「生成AIを活用できる環境を整えること」です。
生成AIは、人が持っている知識や組織のルールを自ら学習して理解するわけではありません。適切な回答を得るためには、業務手順やルール、マニュアル、過去の事例など、組織の情報が整理されていることが前提になります。
例えば、「この申請書の処理方法を教えて」とAIに質問したとしても、業務マニュアル(基本ルール)が存在しなければ、AIは組織独自のルールを理解することはできません。担当者ごとにやり方が違っていたり、口頭でしか引き継がれていない業務では、AIも正しい支援はできないのです。
つまり、生成AIの導入前にまず取り組むべきことは、「業務の見える化」です。
まずは現状業務(AS IS)を整理し、業務フローを作成する。どの部署が、どのタイミングで、どのような手順で業務を行っているのかを可視化することで、改善すべき課題が見えてきます。
次に必要なのが、「業務の標準化」です。
同じ業務でも担当者によって処理方法が異なる場合、AIはどれを基準に回答すればよいか判断できません。運用ルールを整理し、「これが標準的な業務である」という共通認識を持つことが重要です。
さらに、「業務マニュアルの整備」も欠かせません。
マニュアルは単なる引継ぎ資料ではなく、組織の知識を蓄積した重要な資産です。生成AIは、この知識を活用することで、職員への回答支援や文書作成支援など、本来の力を発揮します。
また、生成AIを効果的に活用するためには、「何をAIに任せ、何を人が判断するのか」という役割分担も明確にする必要があります。AIは情報整理や文章作成は得意ですが、政策判断や住民対応の最終判断を行うものではありません。職員の経験や専門性とAIを組み合わせることで、より質の高い行政サービスにつながります。
生成AIは非常に優れた技術ですが、業務が整理されていない組織では、その効果を十分に発揮することはできません。逆に言えば、業務フローや業務マニュアルが整備され、標準化された組織ほど、生成AIの導入効果は大きくなります。
「AIを導入する」ことが目的ではなく、「より良い業務を実現する」ことが目的です。
そのためには、まず業務を見える化し、標準化し、組織の知識を整理することが欠かせません。生成AIは業務改善の出発点ではなく、その成果をさらに高めるための強力なパートナーです。だからこそ、導入を急ぐのではなく、活用できる土台づくりから始めることが、生成AIを成功に導く最も確実な方法と言えるでしょう。